水資源を大幅に節約する新しい技術として"エアロビックライス"法と呼ばれる、畑条件で行うイネの多収穫栽培法が今世紀に入って国際的に注目され始めている。そこで本研究では、有望な節水栽培技術として " エアロビックライス " 法をターゲットとし、充分に施肥を行い適宜潅水する畑条件においてイネ収量の更なる向上を目指す。具体的には、水田条件の超多収レベルとされる10t/haの収量(日本の平均は6.6t/ha ; FAOSTAT 2007)'を畑条件において達成することを目指す(現在の畑条件のイネ多収事例の3割増に相当)。とくに本研究では、" エアロビックライス " 法における葉面展開および水分ストレス程度の品種間差異を明らかにすること、さらにその差異の要因として考えられるイネ根系の生長と機能の動態を明らかにすること、を目的とした。この結果、少なくとも日本では、エアロビックライス法においても慣行の灌概水田作と同水準の収穫量が可能で、多収性水稲品種を用いることで最大9-10t/haの収量をあげることを確認した。しかしこうした品種は、エアロビックライス法において生育初期の根系発達が抑制されており、生育全般を通じて水田条件よりも著しく根量が少なかった。また、軽度の土壌乾燥に対する植物体の水分状態の応答は生育初期においてより敏感に生じていた。こうした知見により、エアロビックライス法におけるイネ苗立ち期の灌概の重要性が示唆された。このようなエアロビックライス法における生育の特徴は、直播等の栽培的要因よりも土壌水分環境の要因によることがポット試験によって示唆された。
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