本研究は海岸地域のレクリエーション利用が環境に与える影響を把握し、効果的な管理手法について明らかにすることで持続可能なレクリエーション利用を提言することを目的としている。本年度は第一に日本の海岸域における環境保全と利用管理の現状を現地調査や聞き取り調査から把握することを目的とした。多くの海岸は漂着ゴミや利用者によるゴミの放置を問題として挙げていたが、その対策はボランティア清掃が中心であった。第二に、北海道の石狩海岸を対象とした車両の海岸砂丘への乗入れが海岸植生や砂丘地形に与える影響、ならびに植生・地形回復に有効な管理手法を把握することを目的に、調査地の選定および植生回復試験区の設置を行った。2年間のトラフィックカウンタによる計測結果から、車両の走行は週末に集中し、走行台数は決して多くはないが、海岸植生の減少と砂丘地形の改変に大きく影響していることが把握された。植生回復試験区については、完全に車両の乗入れを防止し、(1)そのまま回復状況をモニタリングする地点、(2)防風ネットで囲い砂の移動を軽減して回復状況をモニタリングする地点、(3)地形が改変された場所を埋め戻し防風ネットで囲んで砂の移動を軽減して回復状況をモニタリングする地点、の3地点での変化を把握した。その結果、(1)や(2)ではほぼ周辺環境と変わらぬまで植生が回復していたが、地形がえぐれた地点においては回復速度に違いが見られ、十分な回復にまで至っていなかった。一方、(3)の地点では全く植生回復が見られず、合わせて行なったシードバンク調査の結果から、埋め戻しに使用した砂に種子が全く含まれていなかったことがその原因であると考えられた。
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