本研究は海岸地域のレクリエーション利用が環境に与える影響を把握し、効果的な管理手法について明らかにすることで持続可能なレクリエーション利用を提言することを目的としている。本年度は当該研究課題の最終年度であることから、今年度の調査で得られた知見を加味した研究成果のとりまとめを行なった。本研究の成果として、海岸砂丘での車両走行はたとえ週末の数台であっても、植生および砂丘地形には大きな影響を与える事が把握された。また、植生の回復には車両を規制する事が最も効果的であったが、大きな改変を受けた場所においては砂の移動が激しく、安定するまでに3年を要した。このような場所では、防風ネットによる環境の安定化も効果的であったが、内陸性の種が増加し、海浜植生が減退する傾向が確認されたことから、海岸砂丘における植生回復には回復目標に応じた保全手法が重要である事が明らかとなった。技術的な保全手法を明らかにする一方で、海岸環境の保全が進まない大きな要因について検討した結果、特にレクリエーション需要の多い砂浜海岸において、海浜部の自然度しか考慮されていない、現状の自然海岸の定義に大きな問題がある事が明らかとなった。海岸は陸と海の緩衝帯としての役割が大きい事から、特に砂浜海岸の持続可能なレクリエーション利用を行なう上で、その生態的機能を損なう事なく利用する事が重要であるが、そのためにも海浜部だけでなく、後背地の砂丘や海岸林との連続性とその保全に配慮した、土地利用計画と管理計画が重要であると結論づけた。
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