研究概要 |
本研究は、我が国の文化及び自然環境に即した緑地評価システムの構築を行う事を目的とし、本システムを用いて都市近郊の緑地を再評価・図化することまでを研究範囲に設定した.最終年度である本年度は,平成20年度および21年度の分析結果をもとに求めた緑地機能の多義性に対する構造の分析結果を基礎データとして用い,日本的自然観を組み込んだ緑地評価システムの構築を行った. まず,緑地の機能を整理分類した上で,対象地の社寺緑地がどの機能を有するかを整理し,都市近郊地域における社寺林の緑地としての機能面の特徴と差異を明らかにした。次に,明治初期から現在までの空中写真および高解像度衛星画像を用いて空間解析を行い,社寺林と里山林の変遷を明らかにした。また,江戸時代の絵図に描かれた植生情報を手掛かりとして,古地図とGISを用いた空間解析を行い,社寺林と里山での緑地に対する利用の相違点や植生の特徴を把握した.これにより,絵図をもとにしたランドスケープ復元の有効性と限界を明らかにすることも出来,これまで行われてきたメッシュ単位の分析に比べてより詳細な情報を取得することが可能となった.これらをもとに,同一地域における緑地利用形態の相違点を明らかにし,そこから我が国の文化及び自然環境に即した緑地の形態を明らかにした.また,制度上の位置づけや相互関係を把握することにより,緑地としての空間配置上の特徴と制度上の問題点および緑地保全へ向けた改善点を明らかにし,我が国の文化及び自然環境に即した緑地評価システムの構築を行った。
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