研究概要 |
ジベレリン(以下GA)処理によるブドウの無核化技術は現在広く用いられている重要な栽培技術の一つであるが, その作用機構についてはほとんどわかっていない.そこで本研究では, GA処理した果実における遺伝子発現を調査することにより, GA処理による無核化機構解明を試みている.本年度は, 植物ホルモン(GAおよびオーキシン)処理による果実の無核果率および遺伝子発現の変化について調査した. 収穫果実の無核果率について調査した結果, GA処理では96%の果実で無核となったが, オーキシン処理では53%と対照区の38%よりもやや高い程度であった.しかし, オーキシン処理では不完全種子および不受精胚珠の数が有意に増加した.これらの結果から, GAは種子形成を阻害すると同時に果肉の肥大を促進することによって単為結果するが, オーキシンは不受精胚珠のような擬似的な種子様組織を形成することによりシンク力を高めて単為結果するのではないかと考えられた. 次に, ホルモン関係遺伝子の発現を調査するため, GA処理と無処理果実からRT-PCRにより遺伝子を単離した.その結果, GA生合成系については, GA2酸化酵素(以後GA2ox)を3種類, GA20酸化酵素(以後GA20ox)を2種類, GA3酸化酵素(以後GA3ox)を1種類単離できた.また, オーキシンシグナル伝達系のIAA9も単離したが, これは既知の配列と同じであった.これらに加え, データベース検索からGA2oxをさらに2種類, GA20oxを3種類, GA3oxを1種類同定した.これら13遺伝子の塩基配列からプライマーを設計し, GAおよびオーキシン処理果と無処理果で遺伝子発現の違いをRT-PCRにより経時的に調査した結果, オーキシン処理と無処理では発現にあまり違いが見られなかったが, GA処理では, 活性型GAを合成するGA20oxとGA3oxの発現が減少し, 活性型GAを不活性化するGA2oxの発現が高くなっていた.次年度は, これら遺伝子の発現について品種間差や処理濃度による違いなどさらに詳細な調査を行う予定である.
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