研究概要 |
ジベレリン(GA)処理によるブドウの無核化技術は現在広く用いられている重要な栽培技術の一つであるが,その作用機構についてはほとんどわかっていない.そこで本研究では,GA処理した果実における遺伝子発現を調査することにより,GA処理による無核化機構解明を試みている.本年度は,バイオインフォマティクス的手法による単為結果に関係していると考えられる各種遺伝子の探索とジベレジン処理濃度の違いによる無核化率および遺伝子発現を調査した. GA処理による各種遺伝子発現の変化を調査するため,単為結果に関係していると考えられる細胞分裂および糖代謝に関係している遺伝子をバイオインフォマティクス的手法によりブドウのゲノム配列およびそこから推定される転写産物の配列から探索した.その結果,細胞分裂に関係しているCyclinのA1を1種類,B1を2種類,D1を1種類,D3を1種類,および糖代謝に関係しているスクロース合成酵素を5種類,中性インベルターゼを7種類,細胞壁結合型酸性インベルターゼを2種類,液胞型酸性インベルターゼを3種類同定できた.これらの多くははデータベース上で機能未知とされている遺伝子であったが,全て各遺伝子特有のモチーフを有しており,他植物の同種の遺伝子と非常に高い相同性が見られたことから,それぞれの機能を有する遺伝子である可能性が高いと考えられた. 収穫果実の無核果率について調査した結果,慣行のGA25ppm処理では85%であったのに対し,50ppm処理区では84%と慣行との差は見られなかったが,12.5ppm処理区では58%であり,無処理の32%と慣行処理の中間を示した.そこで,これら無処理,12.5ppm処理,25ppm処理果実に関して,昨年度に単離したジベレリン生合成系遺伝子および上記の各種遺伝子に関してRT-PCRによる発現解析を試みたが,処理時における果房内での開花のステージにばらつきがあったためか反復問の再現性が乏しく,処理区間の発現に差を見出すことはできなかった.
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