研究概要 |
本年度には、果樹作物において一過的RNAサイレンシング法の確立を試みるとともに、その技術を用いた成熟制御因子の解析を開始することを目的とし、以下の3項目に分類される研究を行った。 1)トマトを用いた解析の候補となる成熟制御因子の絞り込み トマトにおいて獲得しているVIGS法による簡易なRNAサイレンシング手法を用いて、ブドウやカンキツにおいて解析するべき因子の絞り込みを行った,その結果,昨年度に選抜されたMADS-Box転写因子に属するAP3,TM6,AGおよびAGL1に加えて,新たにGRASとbZipに属する転写因子が候補として選抜された.特に,GRASに関しては,これまでに成熟への関与が全く報告されていない遺伝子であり,新規性のある結果てあった. 2)ブドウ成熟制御因子に関する、hair-pin RNAiコンストラクトの作成 ブドウより,AP3のホモログを単離し,hair-pin RNAi用のコンストラクトを作成に成功した. 3)ブドウにおける一過的hair-pin RNAiによる成熟制御因子の同定 昨年度までに完成しているブドウのR1N、TM6、AGのhair-pin RNAiコンストラクトおよび本年度2)において作成したAP3のhair-pin RNAiコンストラクトと,昨年度までに育成した鉢植個体を用い、ブドウにおける一過的hair-pin RNAiを実施し、その果実成熟への影響を調査した。その結果,いずれの遺伝子に関しても対照区と比べ,有意な成熟の遅延や促進はみられず,これら遺伝子のブドウの成熟への関与は明確ではなかった. 以上より,トマトを用いて成熟に関連する遺伝子の絞り込みを行い,それらの遺伝子に関して,果樹作物ブドウにおける一過的RNAサイレンシング実施に成功したが,これらの遺伝子のブドウ成熟への関与は明確ではなかった.
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