研究概要 |
始めに, 食用ハスの実験系を確立する目的で, 実生植え付け後, どの時期から日長を感受し始めるかを明らかにした. その結果, 実生植え付け2週間後から日長を感じ始めていることがわかった. そこで, 無加温温室内において, 実生を長日条件(非球根形成区)下で3週間栽培後, 長日条件(非球根形成)および短日条件(球根形成区)へ移し, 短日および長日処理開始0〜3週間までの根茎の生育調査を行った. その結果, 長日条件区に比べ, 短日条件区では処理開始2週間後から節間の最大直径が大きくなり, 節間長も短くなった. その結果, 根茎の肥大の指標として用いている肥大指数(節間の最大直径/節間長)も大きくなった. このことから, 短日処理開始2週間後から, 根茎が肥大することがわかった. この実験系を用いて次の実験を行った. 以前の実験において, 日長によるアブシジン酸量の制御で, 根茎の肥大・伸長が決定されていることが推測されていることから, アブシジン酸の生合成・代謝酵素遺伝子の発現量について調査を行った. 始めに, アブシジン酸生合成・代謝酵素遺伝子の単離・同定を行った. Degenerate pdmerを用いてPCRを行った結果, ZEP, NCED, ABA8'-OHaseで, 目的とするサイズのフラグメントが検出された. その中で, アブシジン酸量を制御している可能性が高いアブシジン酸生合成酵素遺伝子NCEDの配列を始めに決定した. その後, NCEDの配列を基にprimerを作製し, リアルタイムPCR法で発現量を測定したところ, 短日条件区では, 短日処理開始2週間後からNCEDの発現量が大きくなり, 短日処理開始3週間後では, 長日条件区に比べ約6倍発現量が高かった. このことから, 食用ハスは, 短日条件でアブシジン酸生合成酵素遺伝子NCEDの発現量が増加した結果, アブシジン酸量が増加し根茎が肥大すると推察された.
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