本研究では黒とう病抵抗性である米国ブドウ、罹病性である欧州ブドウ、そして両者の雑種系統について黒とう病発病程度の評価をすると共に、量的抵抗性の実体が、ある特定の過程(感染の認識、抗菌物質の生成、防御関連遺伝子の発現)に由来しているのか、あるいは複数の過程における複合的な影響であるのか解明することを目的としている。 平成20年度においては、13品種系統を用い、圃場での病斑径と温室で栽培した植物の切葉への接種試験による病斑径の相関が非常に高い(相関係数r>0.9)ことを明らかにした。またこの病斑径を基にした抵抗性の品種間差異の評価は、既報の黒とう病抵抗性をよく反映していたことから、病斑径により表現される「ブドウ植物体による黒とう病病斑の進展抑制能力」が抵抗性の主要な要因であることが示唆された。以上の内容について学会発表を行うと共に、論文を執筆中である。一方、病斑数は抵抗性が強いとされる品種でもかなり多くなる場合があることや、表現形の変動(同一接種条件下での病斑数の変動)が大きいことなどから、評価が難しく、一概に既知の抵抗性との相関が高くは無いと予想された。病斑数により表現される「病原菌の植物体内への進入抑制能」の抵抗性要因としての意義が完全に否定されるものではないが、科学的評価、解析に供するには扱うことが難しい形質であることが予想された。 一方、本研究の基盤となる黒とう病分生子形成法について、本年度中により詳細な解析を加え、論文を投稿し受理された。この成果によりより安定して黒とう病分生子を得ることが可能になった。
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