ブドウ遺伝資源45品種系統を用いて、感染14日後のブドウ黒とう病病斑径の調査を行った。その中で、既報により黒とう病抵抗性の明らかにされている20品種について、本調査により明らかにされた平均病斑径との相関を調べた。その結果、両者の相関はR=0.75と一定の相関がみられたことから、病斑径を基に抵抗性の品種間差異を評価することは有効であることを明らかにした。また、供試した品種系統の中に、供試葉内での病斑径のばらつきが大きく、褐点状の病斑と進展性の病斑が混在する品種(パーレット、エキゾチック、ピオーネ)があることを見出し、一部の罹病性品種は、部分的に抵抗性を発揮しうることが示唆された。こうした抵抗性を有する品種は、他の高度罹病性品種と比較して抵抗性母本としての価値を有することが予想される。 抵抗反応の一つである過敏感反応(HR)について調べるため、Lactophenol trypan blue染色を行った。その結果、イタリアやトムソンシードレスといった罹病性のヨーロッパブドウ品種では、感染2日後に染色される植物細胞はほとんど観察されず、感染7日後においても、HRの生じていない領域に旺盛な菌糸の進展がみられた。一方、Vitis aestivalisでは、感染2日後には感染部位付近においてHRが観察され、菌糸の進展が完全に抑えられるか、非常に抑制されていたことから、この時期にはすでに植物体が菌の侵入を認識し、抵抗反応を誘導できていることが示された。また細胞死と共にフェノール化合物と予想される褐色の物質の蓄積も観察された。こうしたHRやフェノール物質の蓄積が、感染初期に生じる.かどうかが、抵抗性品種間差異の一つの重要な指標となることが考えられる。
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