今年度は、前年度までに収集した明治・大正・昭和前期に発行された造園・園芸・建築に関連する雑誌、古写真、絵葉書、専門書等の文献資料を整理・分析をおこなった。あわせて、近代別荘地として良く知られている神奈川県大磯の近代庭園等について現地調査をおこなった。また、昭和初期における近代東京の洋風庭園の到達点を示す現存事例と目される前田侯爵邸庭園(東京都目黒区)については、現地調査と図面解析を実施した。さらに、近代の洋風庭園に造園資材として多数用いられた擬木や擬石についても、歴史的展開と製作方法について明らかにした。 上記の作業を通じて、本年度は都市および公園空間に形成された洋風造園意匠について整理するとともに、洋風庭園もその主要な対象として含まれる近代のランドスケープ遺産の保全計画のための基礎的知見を得ることができた。近代東京の都市・公園空間に現れた洋風造園意匠については、特に名神宮内外苑、および震災復興公園の造形意匠について検討をおこなった。 また、前田侯爵邸の造園プランについては、これまで、洋風庭園代表例として知られる旧岩崎邸(東京都台東区)や旧古河邸(東京都北区)とは大きく、主屋の配置計画が異なっていた点に着目して図面分析をおこなったが、その結果、主屋は敷地対角線の交点に1階テラス中央部に合致するよう配置されており、馬蹄形の洋風園地の園路も、その交点から放射状に展開されるよう、きわめコンセプチュアルな空間設計がおこなわれている点が判明した。
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