ToMV MPと相互作用する植物因子KELPによる感染抑制作用を明らかにするため以下の3つのテーマについて実験を行った。 (テーマ1)一過性過剰発現系におけるKELPのウイルス移行阻害機構の解析を目的とし、以下の3つの実験を行った。(1) bimolecular fluorescence complementation法に用いるプラスミドの作製およびMPとKELPの相互作用について検証した。(2) MPとGFPの融合タンパク質をコードするToMV感染性クローンを含む遺伝子導入用プラスミドを作製した。ウイルス感染時において、KELP過剰発現がMPの細胞内局在を変化させることを示唆するデータを得た。(3) KELPの配列に核排出シグナルを付加し、核に局在できないKELPの遺伝子発現プラスミドの構築を試みた。そのプラスミドを用いて実験を行ったが、KELPを完全に核から排除できなかった。 (テーマ2)シロイヌナズナを用いたKELPの機能解析および遺伝子発現解析を行うため、KELP遺伝子の過剰発現体および欠損変異体の系統を選抜し、ホモ系統を確立した。ToMV粒子を接種し、ウエスタンブロット解析(外被タンパク質の検出)を経時的に行い、欠損変異体ではウイルスの感染初期において増殖が高まっていることを示唆するデータを得た。 (テーマ3)KLEPホモログのウイルス感染抑制機能の検証を目的として、トマト(Lycopersicon esculentum)、イネ(Oryza sativa)、タバコ(Nicotiana tabacum)やN.benthamianaからのKELPホモログのクローニングを行い、遺伝子発現ベクターに導入した。 以上の成果は、KELPがウイルス感染抑制因子として働くことを示すと同時に、今後の更なる機能解明に貢献するものである。
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