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トマトモザイクウイルス(ToMV)あるいはキュウリモザイクウイルス(CMV)のMP(移行タンパク質)と結合する能力を有する植物因子KELP (Arabidopsis thaliana由来)が植物ウイルスの移行をどのように抑制するのか、特にMPの機能にどのように作用しているのかという点に関して分子レベルでの解析をさらに進めた。(1) bimolecular fluorescence complementation法を利用し、KELPとMPのin vivoでの相互作用を確認することができた。(2) MPとGFPの融合タンパク質をコードするToMV感染性クローンを含む遺伝子導入用プラスミドを利用し、ウイルス感染時における、KELPの一過的過剰発現によるMPの細胞内局在の経時的な変化を調べた。その結果、MP-GFP融合タンパク質を発現するウイルスは、自身の細胞間移行が著しく抑制されると同時に、MP-GFPの細胞内局在も大きく変化することが分かった。(1)と(2)から、KELPはウイルス感染時にMPと相互作用し、MPの機能を阻害することでウイルスの移行を抑制しているというモデルが考えられた。(3)ブラシカ植物(Brassica campestris)、トマト(Lycopersicon esculentum)、イネ(Oryza sativa)、タバコ(Nicotiana tabacum)に由来するKELPホモログのcDNAを利用し、ウイルスの細胞間移行における抑制効果を調べた。その結果、これらのホモログは全て、一過的過剰発現下で、ToMVの細胞間移行を抑制することが分かった。また、CMVMPをコードする組換えToMV感染性クローンに対するKELPの移行抑制効果を検証したところ、この組換えウイルスの移行も抑制できることが分かった。本研究から、KELPは多くの植物に保存された、異種ウイルスの細胞間移行を抑制することのできる有用な遺伝子である可能性が示され、効果的なウイルス抵抗性植物の作出に向けて重要なデータを得ることができた。
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