研究課題
病原細菌が分泌するエフェクタータンパク質(病原性因子)の宿主植物側への作用、および宿主タンパク質との相互作用について解析を行った。カンキツかいよう病は、感染部位における細胞の肥大や異常分裂により組織隆起が引き起こされるが、病原細菌(Xanthomonas axonopodis pv.citri ; Xac)が分泌するApl1が主要な病原性因子であることが示されている。Apl1と結合する植物タンパク質を探索した結果、複数の植物タンパク質を同定し、Xacの感染に伴いこれらタンパク質をコードする遺伝子の発現量が変動することを確認した。またin vivo一過的発現系を用いて、これら植物タンパク質の活性を調べた結果、Apl1存在下では植物タンパク質の酵素活性低下が認められたことから、Apl1との結合により酵素活性が変動する可能性が示された。一方、Apl1は植物の細胞肥大に関わる遺伝子のプロモーター領域に結合することを確認したことから、細胞の肥大や異常分裂との関連をより詳細に調べることを目的として、オーキシン関連遺伝子、およびヒトの腫瘍細胞にて高い活性が認められるテロメラーゼの関連遺伝子について、感染植物組織内における発現解析を行った。その結果、Xac野生株の接種領域では速やかな発現上昇が認められたのに対し、Apl1を欠損したXac変異株の接種領域では発現量の低下もしくは遅延が認められた。また、テロメラーゼのサブユニットをコードするTERT遺伝子のジーンサイレンシングを誘導しXac野生株を接種した結果、病斑形成が抑制され、さらに感染初期段階からXacの増殖そのものが抑制されることを明らかにした。感染部位における組織学的解析からも、テロメラーゼの活性抑制に伴い、植物細胞の肥大と分裂の抑制、さらにXac分布域の減少を確認した。これらの結果から、Xac感染課程において病原性因子Apl1は、植物タンパク質との相互作用の他、植物遺伝子の転写量を調節することにより植物細胞の肥大や分裂に関わる植物側因子の機能および発現を制御し、かいよう形成に関わることが示された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
J.Gen.Plant Pathol.
巻: 76 ページ: 415-416
Virus Res.
巻: 152 ページ: 1-9
巻: 76 ページ: 132-142
日本植物病理学会報
巻: 76 ページ: 132