研究概要 |
本年度は以下の2点を中心に実施し、今後の応用展開につながる重要な成果を得た。 1. モデルタンパク質におけるPhe誘導体への置換率の解析 モデルタンパク質(EGFP)を発現させたカイコ(B.mori)卵巣由来の培養細胞(BmN)から当該タンパク質を簡便な方法で精製し、これのゲル内消化断片のMALDI-TOF-MS解析により、ブェニルアラニン(Phe)を含む断片を同定した。また、Pheを欠乏した培地中ではモデルタンパク質の発現が大幅に抑制されることを確認した。これにより、BmN細胞を用いてモデルタンパク質へのPhe誘導体の取り込みをアッセイする実験系を確立した。天然のPheをパラ位置換誘導体(p-CI-, p-Br-, p-I-Phe)へ置換した培地中で、改変型フェニルアラニル-tRNA合成酵素(PheR3)とモデルタンパク質を共発現させアッセイを試みたが、誘導体の取り込みを確認するには至らなかった。今後、アッセイに適した発現条件を詳細に検討する。 2. 改変型カイコPheRSのin vitro機能解析系の確立 野生型および改変型カイコPheRSを大腸菌で発現・精製する条件を確立した。In vitroにおいてこの組換えPheRSがカイコtRNA^Pheをアミノアシル化する活性を有することを、電気泳動を用いた定性評価法で確認した。カイコPheRSα-subunitのAla450をGlyに置換した変異体が、パラ位に置換基(p-Cl-. p-Br-)を有するPhe誘導体を基質として認識できることを明らかにした。これは、非天然アミノ酸を認識するカイコ由来アミノアシル-tRNA合成酵素変異体の初めての作出例であり、カイコの遺伝子組換え技術を用いて非天然アミノ酸を含むタンパク質を大量に合成するための重要な知見として利用できる。
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