クワ耐虫性タンパク質(MLX56)は、プロテアーゼ耐性であり強いキチン結合能を有することがわかっているが、このタンパク質がなぜ昆虫に対し毒性を発現し昆虫種によってMLX56に対する感受性が異なるのか解明されていない。そこで精製したMLX56をエリサン幼虫およびカイコ幼虫に供試し、1日後の中腸組織の形態を観察したところ、BT毒素を供したときに観察されるような中腸組織の崩壊は確認されなかった。しかしながらFITCで標識したMLX56を上記幼虫に供試し、1日後に中腸の各組織を蛍光顕微鏡で観察したところ、エリサン幼虫の囲食膜全体にわたってMLX56の結合が観察されたが、カイコ幼虫のそれにはほとんど結合せず、MLX56のほとんどは未消化のまま糞に排泄された。MLX56の結合は他の中腸組織では確認されなかったことから、MLX56のターゲットは囲食膜であることが推測され、カイコ幼虫は食したMLX56をそのまま排泄することでクワの耐虫性機構を回避していることが示唆された。
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