研究概要 |
ショウジョウバエと、その共生細菌で「雄殺し」という生殖操作をおこなうスピロプラズマからなる共生系をモデル実験系とし、共生関連遺伝子とその機能を明らかにすることを目的に研究を遂行した。 ・ 昨年度に精製に成功した3系統のスピロプラズマ(Drosophila nebulosa由来の雄殺しスピロプラズマNSRO系統、NSRO系統の突然変異体で雄を殺さないNSRO-A系統、キイロショウジョウバエD.melanogaster由来の雄殺しスピロプラズマMSRO系統)のファージゲノム、特にNSROとNSRO-Aの解析を進めた。5倍の冗長度でショットガンシーケンスをおこなった結果、NSROのファージについては11の断片配列、のべ28,152bpの塩基配列を、NSRO-Aのファージについては10の断片配列、のべ23,892bpの塩基配列を得ることができた。相同性検索の結果、それぞれ少なくとも21および23の遺伝子が含まれていた。ほとんどすべての遺伝子が、Spiroplasma citriの遺伝子と高い相同性を示した。 ・ 宿主の免疫機構とスピロプラズマNSRO系統、NSRO-A系統感染の関係について詳細な解析を行った。NSROもNSRO-Aも、宿主の抗菌タンパク質遺伝子の発現を誘導しないこと、菌体接種による発現誘導を抑制しないことが明らかになった。加えて、NSROは宿主の抗菌タンパク質遺伝子のいくつかについて構成的な発現を抑制していること、抗菌タンパク質に対する抵抗性を有することが明らかになった。興味深いことに、NSRO-Aはこれらの特徴を失っており、オス殺し能力の喪失との関係が示唆された。 ・ 性比に関係する母系効果遺伝子を取得するために行ったEPg因子挿入系統のスクリーニングにおいて、メスの卵巣で遺伝子を強制発現させると子孫の性比がオスに偏る系統を16系統取得した。
|