研究課題
本研究は、東南アジアにおける生物的防除資材としてのハナカメムシ類の探索と、それらの簡易的な同定法の構築をめざすことで、生物的防除研究への方途を見出そうとするものである。最終年度である本年度は、過去2年間の調査結果に基づいて農業害虫の個体群抑制に有効に働くと考えられる種のスクリーニングを試みた。具体的には、現地調査により蔬菜類および果樹害虫の有力天敵として、ヒメハナカメムシ属Oriusやジンガサハナカメムシ属Wollastoniella、ケシハナカメムシ属Cardiastethusおよび捕食性カスミカメムシ類(チビトビカスミカメ属Campylommaやヒョウタンカスミカメ属Pilophorus)が多数得られたため、それらを中心に種の確定と生態情報をまとめた。Wollastoniellaに関しては、タイ産の既知2種(W.rotundaとW.parvicuneis)と同所的に生息する第3の種を新種W.dichromaとして発表した。それら3種はナス耕作地だけでなく、畑周辺のオオバギやアオギリなどの広葉樹でも多数発生していることがわかった。Oriusに関しては、タイ全土で得られた標本を精査し、6未記載種を含む8種を確認した。そのうち未記載種の1種はタイ中部~北東部で優占的に得られ、マンゴーやアカシアなどの花でアザミウマ類の捕食者として働いている。Cardiastethus、Campylomma、Pilophorusの種もOrius同様、年間通じて果菜類の花から安定的に得られていた。調査地ではいずれもアザミウマ類を捕食対象としていた可能性が高い。タイでの調査で得られた結果は、国際カメムシ学会(中国・天津)および日本昆虫学会(山形大学)において、捕食対象害虫や関連植物などの生態情報を周知し、同定が困難な種に関しては写真や図を用いて容易に同定検索できるようにまとめた。今後は、有力な天敵候補種を確定すべく、蓄積した生態情報と決定した種の情報を合わせて天敵としての有効性をさらに評価していく。
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