本研究では、光合成機能と窒素のリサイクル機構の両面から植物の生長に深く関わる「老化葉におけるCO_2固定酵素、Rubiscoの分解機構」について分子レベルで明らかにすることを目的とし、特に分子遺伝学解析に焦点を絞り、その中核となる変異体の選抜とそれらの原因遺伝子の同定を行った。本年度の成果は以下の通りである。 (1)ストロミュール形成変異体の選抜 35Sプロモーター制御下で葉緑体移行GFPを発現する形質転換体の種子をアルキル化剤、EMSで処理し、化学的突然変異を誘起させ、次世代(M2)の植物体を用いて変異体の選抜を行った。ストロミュールは光合成を活発に行う葉肉細胞の葉緑体ではあまり見られず、表皮や胚軸、その他の非緑色組織で多く見られる。そこでM2種子をMS培地下、暗所で4日間置いて得られる芽生えの胚軸を材料とし、蛍光顕微鏡下でストロミュールが全く、あるいはほとんど見られないもの、逆に形成が著しく促進される変異体を選抜した。計20000個体のM2植物のスクリーニングを終え、ストロミュールがほとんど見られない1系統(計4アリル)と形成が促進される1系統(1アリル)を得た。 (2)Rubisco分解抑制変異体の選抜 老化時にRubisco量が減少しない変異体を分離するため、定量的な選抜法を確立した。Rubiscoスモールサブユニット(RBCS)のプロモーターで制御されたRBCS-GFPを発現する形質転換体を作成した。(1)と同じ方法で突然変異を誘起させたM2種子を得た後、M2植物の老化葉を用いてRubiscoが残存する変異体の選抜を蛍光イメージングシステムにより非破壊的に行った。計2500個体のM2植物をスクリーニングした段階で当該変異体1個体を得た。
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