エンドファイトは宿主植物に病害耐性、窒素固定、植物ホルモン産生など有用な形質をもたらすことから農業、環境分野への応用が期待されている。本研究では、根粒菌(エンドファイトとしてイネに感染する)を細菌エンドファイトのモデルとし、これらが宿主イネの防御機構を回避して感染・定着する過程に関わる遺伝子を高効率のスクリーニング(Signature-Tagged Mutagenesis法)により同定するとともに、同定した遺伝子が感染・定着の成否を決めるメカニズムを明らかにすることを目的とする。21年度は、前年度のスクリーニングにより得られた変異株の解析を行った。感染効率が低下した変異株集団には、抗菌物質を排出すると思われる輸送タンパク質に変異を持つ株が複数含まれていた。そこで、遺伝的操作が容易であるアルファルファ根粒菌において抗菌物質輸送タンパク質遺伝子の破壊株を作成し、植物由来抗菌物質に対する感受性と感染能力の関連について調べた。その結果、サクラネチン、ナリンゲニン、ベルベリン等に感受性を示したtolC遺伝子破壊株では、野生株との競合条件下において宿主イネに定着した菌数が少なく、感染能力の低下が認められた。抗菌物質耐性を持つことが感染に有利となることは、これまで植物病原細菌では知られていたが、宿主と友好的な関係を結ぶエンドファイティックな感染においても同様であることが示された。本研究の結果は、有用エンドファイトの育種において役立つことが期待される。
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