研究概要 |
ミヤコグサの主要実験系統であるMiyakojimaとGifu、さらにそれらをかけ合わせ、分子マーカーにより遺伝子型が決定された組換え自殖系統(RILs)を実験に用いている。QTL解析に用いるRILsを大幅に増やすために亜鉛に着目した解析を行った。48時間のZn処理によって地上部に輸送されたZn-65の量を比較した結果、発芽後4週目では、MiyakojimaよりもGifuの方が高い亜鉛吸収速度を示すことが明らかになった。イメージングプレートによりZn-65の局在を比較すると、両系統とも共通して茎や節、根の先端に高い集積が見られたものの、全ての部位でGifuの方が高濃度に亜鉛を集積していた。以上からMiyakojimaとGifuで亜鉛の集積速度に差があることが示されたので、RILsを用いて栄養成長期における亜鉛集積速度の比較を行った。これまでに約70系統を用いて亜鉛吸収速度の測定を行い、それらの結果を基にした解析から複数のQTLを得た。ミヤコグサのゲノム情報から、第3染色体80cM付近に得られたQTLには金属輸送に関与するとされるMTPB1,HMA5,HMA7の相同遺伝子が、第6染色体10cM付近のQTLには重金属輸送に関連する遺伝子の相同遺伝子が存在していた。しかしながら他のQTLには金属輸送に関与すると考えられる遺伝子の相同遺伝子が存在しないため、新規金属集積関連遺伝子の取得が期待される。また昨年度の解析で希土類元素であるYの集積に差が認められたことに着目し、その他の希土類元素を多く含むHfならびにAuに由来するマルチトレーサーを用いた解析も進行中である。 以上により、植物が有する金属集積機構では、複数の金属に共通する遺伝子と個々の金属に特異的な遺伝子があることが示唆され、植物の金属集積における協調性と独立性が示されていると考える。
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