ミヤコグサの主要実験系統であるMiyakojimaとGifu、さらにそれらをかけ合わせ、分子マーカーにより遺伝子型が決定された後代である組換え自殖系統(RILs)を用いて亜鉛集積を制御する遺伝子座の同定を進めた。昨年度の解析から栄養成長期のGifuにおいて地上部への高い亜鉛集積が認められたことから、亜鉛集積の系統間差をより詳細に検証するために、亜鉛のトレーサーであるZn-65の挙動をリアルタイムに画像化できるPETIS(Positron-emitting tracer imaging system)法による解析を試みた。根への亜鉛取り込みには両系統に顕著な差は認められなかったものの、Gifuでは根から地上部への亜鉛輸送活性が高く、一方Miyakojimaでは吸収された亜鉛が根に留まる傾向があることが明らかとなった。また地上部への亜鉛集積を対象としたQTL解析では、RILsの解析数を増やして精度を高めたことにより合計20箇所のQTLが得られ、特に第4染色体30cM付近では、亜鉛を輸送するトランスポーターとして知られているIRT1およびZIP10と相同であると予測される遺伝子がQTL領域に存在していた。これらの遺伝子の発現量をMiyakojiimaとGifuの根を用いて比較すると、IRT1およびZIP10の相同遺伝子はGifuにおいてMiyakojimaよりも発現量がそれぞれ3~4倍に高まっていることが示された。本研究によりミヤコグサの亜鉛集積・輸送に関わる複数のQTLが得られたことから、個々の候補領域に存在する遺伝子の発現解析や塩基配列の比較をより効率的に行うことが可能となり、植物の亜鉛集積・輸送に関わる機能の解析において更なる展開が期待される。
|