研究概要 |
我々は最近、アミノ酸ホモポリマー"ε-ポリリジン(ε-PL)"の生合成遺伝子の取得に成功した。そこで、本研究(平成20年度)では、次の3つの実験計画を行った。 1、「ε-PL合成酵素(Pls)の翻訳後修飾部位の同定」 Plsの部位変位酵素(Pls-ATS553A)を構築した結果、野生型の酵素(Pls-AT)は4'-ホスホパンテテイン(4'-PP)化されるが、変異型のPls-ATS553Aは4'-PP化されないことから、553番目のセリン残基が4'-PPの修飾アミノ酸残基であることを明らかにした。さらに、最近、Plsのより詳細な反応機構を明らかにすることができ、本酵素は、従来型のNRPSとは全く異なら反応機構であることを明らかにした。本研究成果は、世界的権威ある科学誌に掲載された(Yamanaka et.al., Nat. Biol., 4, 766-772(2008))。 2、「組換えPls発現系の構築」 ε-PL生産菌であるStreptomyces albulusからのPls精製収率は高くない。従って、Plsの機能解析において、活性型組換え酵素の構築は重要である。そこで、Pls発現用プラスミドpLAE009を構築し、放線菌を宿主として組換えPlsの構築を行った。その結果、C末Hisタグの融合タンパク質としてPlsを効率良く得る方法を確立することができた。 3、「pls遺伝子へのランダム変異導入による触媒アミノ酸残基の同定および鎖長決定機構の解明」 pls遺伝子にランダム変異を遺伝子工学的に導入し、この変異ライブラリーを、すでに構築済みのpls遺伝子破壊株に導入した。現在、得られた形質転換体のε-PL生産性を指標に、ペプチド合成活1生が低下した変異酵素、あるいは、鎖長の異なるε-PLを生成する変異酵素を探索し、解析している。
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