ε-ポリリジン(ε-PL)合成酵素の応用研究として、本研究(平成21年度)では、次の4つの実験計画を行った。 1、「pls遺伝子へのランダム変異導入による触媒アミノ酸残基の同定および鎖長決定機構の解明」:pls遺伝子にランダム変異を遺伝子工学的に導入し、この変異ライブラリーを、すでに構築済みのpls遺伝子破壊株に導入した。現在、得られた形質転換体のε-PL生産性を指標に、ペプチド合成活性が低下した変異酵素、あるいは、鎖長の異なるε-PLを生成する変異酵素を探索し、解析している。 2、「Plsによるリジン構造アナログのホモポリマー創製」:最近我々は、PlsをC末Hisタグ融合タンパク質しとして発現できる系を開発した(特許出願中)。そこで、本系によって得た組換えPlsを用い、リジンとリジン構造アナログから成るヘテロポリマーを創製し、これらの生理活性を調べている。また、リジン構造アナログのみから成るホモポリマーの合成を可能にする変異型Plsの構築を試みている。 3、「A-domain置換型合成酵素(キメラ酵素)の構築と任意アミノ酸のポリマー創製」:各種NRPSのA-domainとPlsとのキメラ酵素を構築し、他種アミノ酸のポリマー合成を試みたが、ペプチド合成ドメイン基質特異性が高く良い結果は得られなかった。そこで、他種抗生物質の生合成遺伝子群に含まれβリジンを基質とするNRPSのA-domainを新たに取得し、このドメインとのキメラ酵素を構築し、βリジンホモポリマーの創製を試みている。 4、「基質特異性超低下ペプチド合成酵素の構築とランダム配列および任意配列ペプチドの創製」:目的酵素の構築には至っていないが、上述した"Plsのpls遺伝子へのランダム変異導入実験"によって、触媒に重要なアミノ酸残基、生成物ペプチドの鎖長決定に関与するアミノ酸残基が特定されつつある。
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