PCB分解菌Rhpdpcpccus jostii RHA1おいて、PCB分解遺伝子群のビフェニルによる転写活性化がPCB分解代謝産物である安息香酸(以下BA)存在下で抑制される現象について、その転写制御機構を明らかにすることを目的として研究をおこなった。まず、BAによる転写活性化の抑制を、異なるBA濃度下で観察したところ、濃度が低いものの方が脱抑制までの時間が短かったことから、BAが分解されることで抑制が解除されることが強く示唆された。次に、転写抑制に関与する物質を同定するため、分解遺伝子の破壊株を作製して解析をおこなった。BA分解遺伝子であるbenA破壊株では、転写活性化の抑制が観察されなかったことから、関与する物質はBAそのものではなく、その代謝産物であることが強く示唆された。代謝産物の一つであるカテコールを培地中に加えると転写活性化が抑制されることから、抑制に直接関与するのは、カテコールあるいはその代謝産物であると考えられる。また、グラム陰性菌においてカタボライト抑制に関与している例が報告されているCrcタンパク質について、RHA1における関与を調べることにした。RHA1のゲノム配列を解析したところ、crc遺伝子と相同性を持つオープンリーディングフレームを4つ(ro00291、ro02178、ro03883、ro06240)見出した。それぞれの破壊株を作製し、BA存在下でのPCB分解遺伝子群の転写制御を観察したところ、RHA1とほぼ同じ挙動を示すことが明らかとなった。4つの遺伝子は互いに類似しているため、一つの遺伝子を破壊するだけでは残ったもので相補されてしまうことが考えられた。今後は多重破壊株の作製が必要になると考えられる。
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