昨年度までに、出芽酵母非必須遺伝子の破壊株セットを利用した網羅的表現型解析により、液胞酸性化やDNA修復、ミトコンドリア機能等に関わる遺伝子が酸化ストレス傷害修復に必要であることを明らかにした。また、液胞酸性化を担うV-ATPaseの機能が様々なストレス耐性に不可欠であることを見出した。今年度は、酸化ストレスマーカーを用いた実験により、ストレス感受性遺伝子破壊株において脂質過酸化等の酸化ストレス傷害が亢進していることを示した。また、酸化ストレス感受性遺伝子破壊株について、V-ATPase機能に着目した解析及びデータマイニングを行い、V-ATPase欠損型表現型を示す新たな遺伝子破壊株を同定した。一方、酸化ストレス耐性を示す遺伝子破壊株について解析を進めた結果、一部の液胞関連遺伝子及びペルオキシソーム関連遺伝子の破壊によって、酸化ストレス耐性が付与される可能性が示唆された。本研究実績は、酸化ストレス傷害修復における液胞関連機能(特にV-ATPase機能)の重要性を示したものであり、ストレス耐性の分子機構解明に大きく貢献するものである。 遺伝子過剰発現株セットを用いた表現型解析については、昨年度に引き続き条件検討を行ったが、当該株セットの性質上、実施が困難であると判断した。本解析を実施するには、当該株セットとは異なる過剰発現株コレクションを活用する必要があると考えられる。
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