寒冷地に自生するザゼンソウは、開花後1-2週間にわたり生殖器官である肉穂花序で発熱することが知られている。多くの植物において見出されている凍結耐性誘導型の低温ストレス回避機構とは異なり、ザゼンソウは発熱することにより低温ストレスを回避していると考えられている。本研究では、ザゼンソウの低温応答遺伝子群を同定して、モデル植物シロイヌナズナ等ですでに報告されている低温応答遺伝子群との比較解析を行うことにより、両者の共通点および相違点を探ることを目的としている。 当該年度はまず、ザゼンソウの低温応答遺伝子群を明らかとするために、ザゼンソウ肉穂花序ESTライブラリーを構築して、効果的かつ汎用的な遺伝子発現解析手法であるSuper SAGE法と組み合わせて解析を行った。発熱ステージおよび発熱ステージ前後の各肉穂花序mRNAから、SuperSAGE法での解析に必要な26bpタグを調製して、各タグの塩基配列を454シーケンサーにより解析した。発現パターンごとにSuper SAGEタグのクラスタリングを行って、発熱ステージ特異的に発現する約900個のタグを見出した。続いて、発熱ステージにある肉穂花序mRNAからESTライブラリーを構築してSuper SAGEタグとのマッチングを行ったところ、発熱ステージ特異的に発現する約150の独立した遺伝子配列を得ることに成功した。得られた遺伝子配列についてBlastnプログラム利用した相同性検索を行ったところ、ミトコンドリア呼吸に関連した遺伝子に加えて、数多くの興味深い遺伝子が見出された。現在、低温誘導前後の肉穂花序mRNAから同様の方法でSuper SAGEタグを調製して、詳細な解析を行っている。
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