研究概要 |
本年度は、研究代表者らが開発したin vitro疑似的運動刺激系を用いた分泌タンパク質(運動因子)の産生制御機構について解析を行った。まず、in vitro擬似的運動刺激系の電気パルス刺激(EPS)条件を細かく検討した結果、より生理的な持久運動効果を発現しうる培養条件・電気パルス刺激条件を見出すことができ、これを報告した(Nedachi他、AJPEM, 2008)。次に、様々な条件でEps後、培養液中に含まれる分泌タンパク質の量的変動を解析した結果、刺激開始30〜60分後に分泌量の増加が観察される運動因子(CXCケモカイン群など)と、12時間以上の刺激によって初めて分泌増加が観察されるもの(IL-6など)の二つのタイプが存在することがわかった。さらに、電気パルス刺激活性化されるシグナル分子の生理的意義について調べた。まず、EPS開始後15〜30分でCa^2+依存的に活性化されるJNKがCXCケモカイン群の産生に重要であることを発見した。一方、IL-6の産生についてはJNKによる制御を受けず、Ca^2+依存的なcalcineurinやNFAT系転写因子の関与が示唆された。まとめると、運動依存的に活性化される複数のシグナル伝達経路は異なる運動因子の産生調節を担うことが初めて示された(Nedachi他、AJpEM投稿中)。さらに、運動因子の生理作用についても解析を進め、CXCケモカイン群が筋芽細胞の遊走と筋分化を正に制御していることを発見した(Nedachi他、AJPEM投稿中)。また本研究結果は、甲状腺細胞増殖に関する研究にも大きく貢献した(Fukushima他、Endocrinology, 2008)。本年度の研究成果によって、新規運動因子の産生制御機構と生理作用の一端が明らかとなった。来年度も本研究計画に沿った研究を推進し、研究代表者らが発見した新規運動因子の全容解明に向けた解析を鋭意推進する予定である。
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