研究概要 |
前年度、申請者はin vitro擬似的運動刺激系を用いた筋管細胞からの分泌タンパク質(運動因子)産生制御機構について解析を行った。その結果、運動因子、特にCXCケモカイン群の産生が、ストレス応答性MAPキナーゼのひとつであるc-Jun N-teminus kinase(JNK)の阻害剤によって強く抑制されることを見出し、JNKが特定の運動因子産生に重要である可能性を示唆した。本年度は、この筋管細胞において運動依存的に活性化されるJNKの機能をさらに詳細に解析した。まず、筋管細胞内JNK量をRNA干渉によって減少させたのち、擬似的運動刺激を行ったところ、運動因子の産生は観察されなくなり、この分子の生理的重要性を強く補強する結果を得た。次に、培養筋管細胞を物理的に伸展させることによっても、このような運動因子の産生が観察されるのかを検討した。その結果、運動因子CXCケモカイン群の産生は伸展刺激によっても観察され、さらに伸展依存的に活性化されるJNKが産生に重要な役割を果たしていた。すなわち、運動依存的な分泌タンパク質産生の一部は、収縮に付随して生じる筋管細胞の伸展に依存していることがはじめて明らかとなった(Nedachi他,AJPEM, 2009)。また、本年度の研究成果は、脳神経保護機能を持つプログラニュリンの産生制御機構解明にも大きく貢献した(Suzuki他, JRD, 2009,根建他,実験医学,2009)。以上、2年間の本研究によって、今まで全く不明であった(1)新規筋由来運動因子の同定、(2)その産生制御機構、(3)収縮と伸展刺激の比較解析が完了し、当該領域に大きく貢献できたと考えている。
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