Pseudomonas putida NBRC100650のdpkA遺伝子を鋳型にしたエラープローンPCRで得た2種類の耐熱型DpkA(#331、#6)をコードする遺伝子の塩基配列を決定し、耐熱性の向上に影響する変異したアミノ酸残基を決定した。#331と#6の変異を合わせ持った変異型酵素(#331/#6)をコードする遺伝子を部位特異的変異導入により作成し、大腸菌で発現させ、遺伝子産物を均一に精製した。精製した野生型酵素と耐熱型酵素#331、#6、#331/#6の熱に対する安定性を比較したところ、野生型酵素は45℃、30分間の熱処理でほぼ完全に失活するが、#331は35%、#6は74%、#331/#6は89%の活性を維持した。また、#331と#6は50℃、30分間の熱処理で完全に失活するのに対して、#331/#6は53%の活性を維持し、#331/#6が高い耐熱性を示すことを明らかにした。#331/#6は野生型酵素や他の変異型酵素と比べてpHの変化に対しても安定で、pH5.0~11.0の範囲で、30℃、30分間処理しても80%以上の活性を維持した。#331/#6の最適な反応条件は45℃、pH9.0であり、野生型酵素とほぼ同じ条件であった。#331/#6の基質特異性について調べたところ、2-オキソ酸に対してはピルビン酸、2-オキソカプロン酸、2-オキソ酪酸、フェニルピルビン酸などに作用し、アミンに対してはメチルアミン以外にも、エチルアミンとプロピルアミンにわずかに作用した。また、NADHよりもNADPHを良い補酵素とした。以上より、変異型酵素#331/#6は様々なN-メチル-L-アミノ酸の合成に利用でき、耐熱性を大幅に改善できたことで従来の野生型酵素よりも長い酵素反応が可能になり、有用物質の生産性を向上させることができると考えられた。
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