海産無脊椎動物グミ由来溶血性レクチンCEL-IIIはヒトやマウスの赤血球を認識し、膜貫通孔を形成することによって、溶血させる。その機構は、まず始めに赤血球表面に存在する糖鎖を認識して結合し、その後、多量体化することによって孔を形成していると考えられている。単量体での立体構造はすでに解明されているが、多量体化状態での立体構造、多量体化の機構は不明である。代表者らはin vitroでの多量体化条件を見出しており、その機構の解明のため同条件でのCEL-IIIの立体構造をX線小角散乱法によって解析した。面In vitroでの多量体化は高塩濃度、高pH、カルシウム及び糖の存在下で起こる。そこで、高塩濃度、高pHの溶液を作成し、それぞれにカルシウムもしくは糖を加え、測定を行った。その結果、高塩濃度、高pHで、カルシウムもしくは糖存在下では、Kratkyプロットが典型的な立体構造を保持していない時の曲線を示し、大きな立体構造の崩壊が起きていることが示された。同条件下で、円偏光二色性の測定を行ったところ、二次構造には大きな変化見られず、二次構造は保持しているものと思われた。カルシウム及び糖の両方が存在していると、多量体化し、およそ24量体を形成していた。これらのことは、CEL-IIIの多量体化は大きな3次構造の崩壊の後に、糖及びカルシウムを認識して多量体構造を形成していると示唆された。このような立体構造を保持せずに基質を認識し、構造形成することは天然変性タンパク質の特徴に良く似ており、その構造形成機構に密接な関係があるのではないかと考えられた。
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