従来法で生産が困難な高度好熱菌のタンパク質を放射線抵抗性細菌内で大量に生産することのできる有用タンパク質生産系開発のために、放射線抵抗性細菌内で高次に機能するプロモーター配列を探索した。具体的には、放射線抵抗性細菌内で安定的に複製可能な放射線抵抗性細菌/大腸菌シャトルベクターpZT29とプロモーター配列を含まないホタル由来ルシフェラーゼ遺伝子(luc+)を組み合わせて構築したプロモーター活性解析用プラスミド(pZSL1)に、プロモーター配列をルシフェラーゼ遺伝子の開始コドンの上流に挿入することで、ルシフェラーゼ遺伝子の発現活性を指標にタンパク質生産に有用なプロモーター配列を探索した。その結果、放射線抵抗性細菌のトランスクリプトーム解析及びゲノム情報を基に設計した7種のプロモーター配列から、放射線抵抗性細菌内で高次に遺伝子発現を誘導することのできる2種のプロモーター配列(groES_P ; 136 bp、及びEF-Tu_P ; 204 bp)を同定した。さらに、groES_P配列の最小領域を同定するために、RNAポリメラーゼ結合領域、転写開始点及びリボソーム結合領域を除く部位を欠失させた変異プロモーター配列(groES_P75 ; 75 bp)を作製し、プロモーター活性の解析を試みたが、プロモーター活性の低下が見られ、欠失させた領域がプロモーター活性に重要な領域であることが明らかになった。今回構築したプロモーター活性解析用プラスミド及び同定したプロモーター配列をベースに、ルシフェラーゼ遺伝子を高度好熱菌の遺伝子にすげ替えることで、高発現プラスミドを構築することが可能であるので、これを用いて高度好熱菌recJ及びruvA遺伝子の発現系の構築に着手した。平成21年度は、この発現系を用いて、効率的な有用タンパク質生産を検証する予定である。
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