放射線抵抗性細菌を宿主として、従来法で生産が困難な高度好熱菌のタンパク質を生産することのできる有用タンパク質生産系開発のため、発現プラスミドを作製し発現解析を行った。まず、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターより提供を受けた高度好熱菌の遺伝子群からrecJ遺伝子を単離し、放射性抵抗性細菌/大腸菌シャトルベクターをべ一スとして構築したタンパク質生産用プラスミド(pgroP_His ; 4.5kbおよびpgeoFF_His ; 4.6kb)のプロモーター配列の下流に、目的遺伝子を挿入することで発現プラスミド(pgroP_His_ttrecJ ; 6.1 kbおよびpgeoFF_His_ttrecJ ; 4.6kb)を作製した。次に、この発現プラスミドを放射線抵抗性細菌に導入し、高度好熱菌RecJタンパク質の生産を試みた。その結果、従来の大腸菌を宿主とした発現系では、RecJタンパク質が不溶化するが、放射線抵抗性細菌を宿主として用いることで、不溶化することなくRecJタンパク質の生産を確認することができた。さらに、放射線抵抗性細菌内でのタンパク質生産量を増加させるために、宿主の改変に着手した。内在性プロテアーゼによる目的タンパク質の分解を抑制するために、抗生物質耐性遺伝子挿入法を用いて、放射線抵抗性細菌のATP依存性プロテアーゼをコードするlon遺伝子の破壊株(XDGLN1)を作製した。この遺伝子破壊株を用いて、RecJタンパク質の生産を確認したところ、RecJタンパク質の分解の低減が見られ、宿主としての有用性を明らかにすることができた。今後は、さらなる高次のタンパク質生産に向けて、プロモーター配列の改変および新規探索、あるいは発現誘導条件の検討が課題である。
|