研究概要 |
21年度は、OsCOI1a,b,cの三重発現抑制株の作成を行うとともに、JAシグナル伝達経路の活性シグナル分子として知られるJA-Ileの生合成変異株Osjar1を用いたトランスクリプトーム解析を進めた。 COI1、JAZと相互作用するリガンドがJAではなくJA-Ileであることは、これまでにCOI1・JAZ・JA-Ileの複合体結晶構造解析からも示されており、JA-IleがJAシグナルの活性型であると考えられている。しかし、実際にJAシグナル伝達のどの程度の範囲をJA-Ileが担っているかについては不明である。また、jar1変異株や、COI1・JAZと直接相互作用する転写因子変異株myc2において、coi1変異株ほどの強いJAシグナル伝達欠損の表現型が現れていないことからも、これまでにproposeされている分子メカニズムがJAシグナルの受容・伝達機構の全容を示しているとは考えにくい。そこで、マイクロアレイを用いて野生型株(WT)とosjar1の植物体についてJA処理時における遺伝子発現を網羅的に解析した。100μM JA処理後0,0.5,1,2,4hにおいてRNAサンプルを調整し、(1)WTにおける0hに対する各経時点での変動の比較と、(2)各経時点でのWTに対するosjar1での変動の比較を行った。まず、解析ソフトPartekを用いていずれかの組み合わせで発現変動が見られる26035遺伝子を抽出し、JA応答性遺伝子とOsJAR1依存的遺伝子の選別を行った。(1)のアレイデータから、WTにおいていずれかの経時点で2倍以上の発現誘導を示した遺伝子が3475個、(2)のアレイデータから、osjar1での発現量がWTの1/2以下に減少した遺伝子が2021個抽出された。これら2群の重複遺伝子は1604遺伝子であり、JA誘導性遺伝子のおよそ半数がOsJAR1依存的な発現誘導を受け、残りの半数はOsJAR1非依存的な発現誘導を受けることが明らかとなった。
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