研究概要 |
放線菌Streptomyces rochei 7434AN4株は2つのポリケチド抗生物質ランカサイジン(LC)・ランカマイシン(LM)を生産する。またγ-ブチロラクトン(GB)を鍵物質としたLC・LM生産制御カスケードの存在も示唆された。本年度は(1)LC大員環形成反応の解析,(2)モジュラー・反復混合型ポリケチド生合成の解析,(3)二次代謝制御遺伝子群の解析,に焦点を絞り研究を実施した。 (1)アミンオキシダーゼLkcEを大量発現し、線状中間体LC-KA05-2との反応に賦した。反応条件を種々検討したところ、pH7.0において目的の17員環閉環体であるランカサイジノールの形成が認められた。これより、LCの大員環形成反応は、まずLkcEによって線状中間体のC-18アミノ基が酸化されてイミニウム中間体となり、これが分子内求核付加反応を受けて17員環骨格が形成される、というメカニズムが明らかとなった(国際会議招待講演)。 (2)3つのKRドメイン(lkcC-KR, lkcF-KR1, lkcF-KR2)の変異株を作製した。代謝産物をTLC, HPLCにより詳細に解析したところ、いずれの変異株もLC中間体を生産しなかった。これはLCのPKSがLCポリケチド中間体の酸化状態を厳密に認識することを示唆している(Biosci. Biotech. Biochem. 2009)。 (3)LM生合成に関してsrrY-srrZというカスケードの存在が示唆された。これを確かめるため、SrrYタンパクを調製し、ゲルシフト解析を行った。その結果、SrrYはsrrZ上流のダイレクトリピート配列(TGGAGTG-GGGC-TCGAACG-GCGC-TGGAGAT)を認識して転写活性化することが明らかとなった(Biosci. Biotech. Biochem. 2010)。
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