本年度は、アクアポリン11(AQP11)の普遍的な生理機能に関する知見を得るために、Aqp11が最も強く発現する器官である腎臓の解析を行った。まず、嚢胞形成機構の解明を目的に、1週齢のAqp11 KOマウスとその野生型同腹子の腎臓について、マイクロアレイ解析および組織化学的解析を行った その結果、Aqp11 KOマウスでは腎臓に発現する遺伝子の約20%が有意に発現変動していた。これら発現が変動した遺伝子の機能分類を行ったところ、細胞増殖、細胞外マトリックス、アポトーシス、分化、免疫応答などの項目に分類された。このような遺伝子プロファイルは、発症率が高く、症状が重篤な遺伝病である嚢胞腎症の病態の特徴と類似していた。また、組織化学的解析の結果、Aqp11 KQマウス腎臓において、嚢胞腎症と同様に、尿細管細胞の増殖および細胞外マトリックス関連遺伝子の発現変化が観察された。本研究からAqp11 KOマウスの嚢胞形成機構は、嚢胞腎症の嚢胞形成機構と共通点を有することが明らかとなった。さらに、Aqp11 KOマウスの嚢胞形成に関わるアポトーシスの機構として、嚢胞腎症では報告のない小胞体ストレス誘導性のアポトーシスの関与を見出した これらの結果は細胞内局在型アクアポリンの生理機能に新たな知見を与えるとともに、未だ不明な点の多い嚢胞腎症の発症機構の解明につながり、さらには、嚢胞腎症の治療法の開発にも寄与するものであると考えている。
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