研究概要 |
これまで1α,25(OH)2D3依存的な転写活性を示さないVDRAF-2領域変異導入マウスおよびVDRKOマウスの比較により、皮膚では1α,25(OH)2D3非依存的なVDRの高次機能が存在することを明らにした。さらにマイクロアレイ解析により1α,25(OH)2D3非依存的なVDRの標的遺伝子の一つを同定し、VDRは1α,25(OH)2D3非依存的にこの遺伝子の転写を抑制することを明らかにした。この遺伝子の発現は皮膚に限らず、乾癬や関節リウマチ、炎症性腸疾患の患者で高発現しており、これら炎症性疾患の病因の一つであると考えられている。これらの疾患は今だ病気のメカニズムが十分解明されておらず、ビタミンDとこれらの炎症性疾患との関わりも示唆されてはいるものの、その作用機序については不明である。このため1α,25(OH)2D3非依存的なVDRの機能も免疫系に関与するのではないかと考えられる。そこで本研究では上記に述べたマウスの比較検討により、免疫システムにおけるVDRの高次機能を明らかにしたいと考える。VDRKOマウスと1α,25(OH)2D3生合成の鍵酵素である1α水酸化酵素KO(1αKO)マウスに炎症性腸疾患モデルである5%硫酸デキストラン(DSS)投与をおこない表現型を解析した。その結果、VDRKOマウス、1αKOマウスともに、体重減少、大腸の長さの短縮、血便、組織切片の異常といった炎症性腸疾患の重篤度を判別する項目について、いずれも野生型と比較し、より顕著な異常を示した。しかしながらVDRKOマウスと1αKOマウスの間の比較では両者の表現型に明らかな差は認められなかった。よって炎症性疾患に対するリガンド依存/非依存的なVDRの機能は組織特異性があり、炎症性腸疾患に対しては、リガンド依存的なVDRの機能が重要であり、症状を抑制する効果があると考えられる。
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