バイオフィルムとは吸着担体上の微生物フィルムのことを指す。一旦形成されて成熟化してしまうと、洗浄・殺菌が困難になるため、食品衛生上その形成防止が重要となる。本研究では、メイラード反応により糖修飾した食品由来タンパク質を分離源として得た新規ペプチドの中からバイオフィルムの形成を阻害するペプチドをスクリーニングし、その機能を解析することを目的としている。これまでに、この画分中から逆逆相クロマトグラフィーと質量分析の結果、そして分離源に用いたタンパク質のアミノ酸配列から、候補ペプチド(LKGとKVA)を得た。LKGを固相合成後グルコース(Glc)を付加したものについて黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べた結果、濃度依存的にバイオフィルムの形成を阻害した。しかし、興味深いことにGlcを付加していない場合にはバイオフィルム形成阻害活性はほとんど認められなかった。 平成21年度においては、KVAを固相合成し、同様にバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べた。その結果、Glcを付加した場合でもLKGと比較して阻害効果は顕著でなかった。次に、Glcを付加したLKGが黄色ブドウ球菌の増殖に及ぼす影響を調べた。その結果、増殖速度を低下させる作用が認められ、これがバイオフィルム形成阻害作用の一因になっていると考えられた。 これまでに上記ペプチドを合成し、一定の成果を挙げてきた。しかし、これ以外の候補ペプチドについても特定を目指すことにした。ここでは直接的にアミノ酸組成を調べることとし、候補ペプチドを単離する条件の検討も行った。
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