研究概要 |
本研究の全体構想は、日本人が古くから飲み親しんでいる「清酒」の生理作用を明らかにしようとするものである。古くから清酒はアルコール飲料としての嗜好品の役割だけでなく、「酒は百薬の長」といわれるように様々な薬理・薬効があるといわれてきた。申請者はこれまでに清酒に特異的・恒常的かつ多量に含まれる配糖体であるethyl α-D-glucoside(α-EG)について研究を行ってきた。本研究の目的はこれまで得られた清酒濃縮物の生理効果に関する研究結果を踏まえ、(1)α-EGの体内動態の検討、(2)清酒濃縮物による皮膚状態の改善作用、(3)α-EGの利尿作用による高尿酸血漿状態の改善効果の点について研究を発展させる。近ごろでは清酒の輸出量が大きく増加し、海外でも"Sake"として注目されるようになった。こういった中で日本人として清酒の生理作用を明らかとすることを目的としている。これまでにα-EGを経口投与したラットの血液や尿中にα-EGが検出されることを示してきた。そこで本年度の研究では計画(1)の通り、ヒトにおけるα-EGの動態を調べるため実験協力者を募り、清酒濃縮物(6g ; α-EGを1g含む)を飲用して頂いた。摂取後0, 1, 2, 3, 6, 12, 24, 26, 48時間後の定期採取時間を含め、合計20回程度のすべての尿を採取した。以前の研究ではサンプル中のα-EGについて陰イオン交換カラムと電気化学検出法を組み合わせたHPAEC法にて測定してきたが、本研究ではLC-MSによる分析法の確立を行った後、定量を行った。また採取したサンプルの一部は検査キット等による臨床一般生化学検査に供したが、健康上問題のある協力者は存在しなかった。現在までに一部のサンプルの分析を行い、摂取されたα-EGの60-80%程度が尿中に排泄されることを明らかとした。加えて新たなサンプルの分析を行っている。
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