本研究の全体構想は「清酒」の生理作用を明らかにしようとするものである。本研究では(1)清酒に含まれるethylα-D-glucoside(α-EG)の体内動態の検討、(2)清酒濃縮物による皮膚状態の改善作用、(3)α-EGの利尿作用による高尿酸血漿状態の改善効果について調べることとした。本年度は(3)高尿酸血漿状態の改善効果について検討した。実験I;ラットにはMF食を、さらに飲料水として蒸留水(Control群)、もしくは清酒濃縮物(Sake群)を自由摂取させた。7日間の飼育終了後、Sake群の肝臓重量が有意に増加したが、血漿GOT・GPT活性に差は認められなかった。また血漿BUN濃度、腎臓重量、腎臓の病理組織学的検査において差は認められなかった。総コレステロール、HDL-コレステロール濃度はSake群で有意に高値を示したが、血漿TG濃度には差が認められなかった。一方血漿尿酸濃度はSake群で有意に低値を示した。実験II;ラットにはオキソン酸(2.5%)とのRNA(2%)をMF食に混合した飼料を与えて高尿酸血症状態とした。飲料水として高尿酸群(HU)には蒸留水を、(HU-Sake)群には清酒濃縮物を与え、7日間の飼育を行った。その結果、肝臓重量及び血漿GOT-GPT活性に有意な差は認められなかった。HU-Sake群で血漿総コレステロール濃度は有意に増加したが、HDL-コレステロール濃度およびTG濃度には有意な差は認められなかった。腎臓重量・血漿BUN濃度に有意な差は認められなかったが、HU群では尿酸およびオキソン酸による形態的な変化が認められた。HU-Sake群では形態的な変化が軽微であった。血漿尿酸濃度ならびに尿酸の尿中排泄量はHU-Sake群で有意に低値を示した。以上から清酒濃縮物投与により血中尿酸濃度の低下が認められ、高尿酸血漿状態の改善効果に期待できることが示唆された。また付加的な結果としてコレステロールへの影響が考えられた。しかしそのメカニズムの解明や清酒濃縮物投与量については検討の余地がある。
|