研究課題
山地源流域における降雨-流出の普遍的な法則を見いだすことをめざし、本研究では個々の小流域観測で得られてきた知見を集め、比較検討すること、また比較解析の手法を開発することを目的としている。具体的には次の実施計画を立てている(1) これまで主に申請者らが詳細な観測を行い、流出素過程が明らかになっている小流域の観測結果を比較し、内部の素過程を反映する指標や、流域間を比較するのに有効な解析手法を開発する。(2) これまで日本国内の小流域での観測で得られてきた流出水量、降水量などの観測結果と流域属性を主に文献調査によりくまなく収集し、データベースを構築する。また、必要に応じて文献では欠けている情報やトレーサ濃度などの調査を行う。(3) 開発した手法、データベースを用いて比較解析を行い、山地源流域での流出応答にもっとも影響を与えている属性とそのメカニズムを明らかにする。今年度は研究計画に沿って、(1)については、複数の小流域で水安定同位体比、CFC_s、SF_6などのトレーサ濃度を測定し、流域間を比較するのに有効な指標となると考えられる流域平均滞留時間の推定をこころみた。その結果、山地源流域の流出水の平均滞留時間には1~10、20年程度の幅があり、どこでも適応可能な単一のトレーサは現時点ではみつからないが、例えば水の安定同位体比は平均滞留時間の比較的短い流域では有効であり、長い流域では相対的な順位がわかること、また(2)については、これまで日本国内の小流域での観測で得られてきた流出水量、降水量などの観測結果と流域属性を文献調査によりくまなく収集し、電子データ化を進めた。現時点では60カ所以上の小流域の洪水流出波形の電子化が終わっており、流域属性データの収集を開始した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Water Resources Research 45
ページ: W10432,doi:10.1029/2008W R007466