研究概要 |
集中観測の実施によって, 降雨時の土壌呼吸速度および土壌中二酸化炭素濃度の連続データの取得に成功した. 2セット(5月, 9月)の観測データの解析と比較によって, 降雨時の土壌呼吸速度および土壌中二酸化炭素濃度の変化は, 降雨によって異なることが明らかになった. 降雨が土壌呼吸速度に与える影響としては, (1)雨水による地表の被覆に伴うガス拡散の停止, (2)雨水の浸透に伴う土壌中のガス移動, の2つが挙げられる. 5月と9月の降雨イベントでは, ともに降雨中の土壌呼吸速度が低下するという点では一致していた. しかしながら, 5月の降雨においては, 降雨時の土壌中二酸化炭素濃度・貯留量の低下から(2)の効果が卓越していることが, 9月の降雨においては, 降雨中の土壌中二酸化炭素濃度・貯留量の増大と降雨直後の土壌呼吸速度の回復から(1)が卓越していることが示唆された. このような降雨による反応の違いは, 降雨に先行する土壌中の二酸化炭素環境の差異に起因していると考えられる. 土壌中の二酸化炭素湧き出し量の季節変化と, 降雨の季節性に伴うガス拡散係数の季節変化によって, 土壌中の二酸化炭素環境も季節性をもつ. 対象地においては夏季の乾燥を境に顕著に変化することが定期観測の結果からも明らかになっており, 5月と9月の降雨時に土壌呼吸速度および土壌中二酸化炭素濃度の変化が異なることの要因となっていると考えられ. 以上によって, 降雨は長期的にも短期的にも土壌呼吸速度に影響を与えることが示された.
|