温室効果ガスであるメタンと一酸化二窒素について、どのような土壌がこれらのガスを吸収するか、あるいは放出するか、そしてその違いを制御する環境要因が何であるかを明らかにするため、簡易なトレーサー測定技術の開発を行っている。これまでの手法では、濃度変動から純生成(消費)速度しか推定してこなかった。しかし、特にメタンについてはメタンを生成する微生物と消費する微生物が全く異なるため、生成と消費を分離し、総生成(消費)速度としてメタンのダイナミクスを議論する必要がある。この総速度測定を実現するために、トレーサー測定の可能な膜導入型質量分析計を組み立て、メタンと一酸化二窒素の予備測定を開始した。土壌培養においては、これまで利用していた容器では、土壌構造を攪乱せずにガス濃度をモニタリングすることができなかったため、容器の容積、サンプリング方法を改良し、非攪乱土壌コアで測定が行える環境を整備した。現在使用している森林土壌が大変低いメタン生成能しか保持していないために、CO2とメタンのマスバランスについて十分に確認が取れていないが、13CO2濃度については良好な分析結果が得られている。一酸化二窒素については、土壌によってはNOが発生し、m/z31の利用が困難であることがあり、現在NOと一酸化二窒素の両方が生成する土壌についての測定について検討を行っている。今後、NH4、NO3、NO2の15Nトレーサーを添加し、水分環境を変化させた非撹乱土壌コアを用い、実際のメタンおよび一酸化二窒素生成消費速度を、窒素飽和森林土壌と窒素制限森林土壌を用いて測定する予定である。
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