研究概要 |
本研究はアルミニウムが植物成長にとって重要な因子であることを明らかにすることを目的に、アルミニウムによる根伸長メカニズムを解明するために窒素代謝に着目して研究を行った。植物材料にコナラの実生苗を用い、水耕栽培によるアルミニウム処理実験を行った。 根の硝酸還元酵素(NR)はアルミニウム処理により活性化されるが、その下流の亜硝酸還元酵素、グルタミン合成酵素の活性は2週間のアルミニウム処理では影響を受けないことが明らかとなった。また、アルミニウム処理によるNR活性の上昇は細胞内カルシウム濃度の増加によることが示唆された。 実生苗の根を一時間塩化アルミニウム溶液に暴露し、その後、アルミニウムを含まない培養液に移し、1,2,3日後のNR活性の変化、根伸長に関わる植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニンの根中の濃度変化を調べた。その結果、アルミニウム処理個体のNR活性が対照区の個体よりも高くなることが明らかになった。また、細胞内オーキシン濃度は対照区個体では減少するが、アルミニウム処理個体では高い濃度を維持した。アルミニウム処理個体において、オーキシン酸化分解物質であるアスパラギン酸縮合体が検出されなかったことから、アルミニウム処理個体に見られたオーキシン濃度維持はアルミニウム処理によってオーキシンの酸化分解抑制によることが示唆された。 以上の結果から、アルミニウムによる根伸長は硝酸還元酵素活性化と、オーキシン濃度が高い濃度で維持されることによって起こることが示唆された。
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