植物細根は植物と土壌の境界にあり、その生産・枯死プロセスは陸域生態系の炭素循環において重要な経路となり、細根生産量は生態系の純一次生産に寄与するほか、窒素などの養分循環に影響を及ぼすことと考えられている。一方、地球規模での環境変化が進行しつつあり、環境変動下での細根動態を評価することも必要である。本研究では、積雪寒冷地域において、積雪量の変化が林床植生の細根動態パターンに及ぼす影響を明らかにするために、北海道北部においてクマイザサを根箱で栽培し、スキャナーを用いて細根生産パターンを測定した。北海道北部における細根バイオマスの主要な構成要素であり、細根への直接的なダメージのほか地上部へのダメージも細根生産に影響を及ぼすと考えられるササを供した。針広混交林においてササを含む50cm四方の土壌を採取し、土壌の側面にアクリル板を取り付けて根箱とし、実験苗畑に移植した。スキャナーを用いて根箱側面の細根を含む画像を撮影した。冬季間に積雪除去処理、および土壌凍結処理を行い、処理区は積雪除去区、土壌凍結区、および対照区とした。土壌凍結区では、外気に開放したパイプを地中に埋設することにより土壌凍結を引き起こした。しかしながら、実験をした年の冬季初期の積雪量が極端に少なかったことから、全処理区でササ地上部は枯死した。一方、根系は全処理区で生存が確認されたが、処理の影響は明らかでなかった。ササは地上部が枯れた場合でも地下茎や細根への炭素や養分の蓄積があるために、生存できるものと考えられた。
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