研究概要 |
植物細根は植物と土壌のインターフェースであり、その生産・枯死プロセスは陸域生態系の炭素循環において重要な経路となり、細根生産量は生態系の純一次生産に寄与するほか、窒素などの養分循環に影響を及ぼすことと考えられでいる。またわが国の冷温帯林は林床植生が密生していることも特徴であり、森林生態系の機能を評価するためには、樹木だけではなく林床植生も含めて評価することが必要である。本研究では、林床植生が密生する冷温帯林における冬季を含めた樹木および林床植生の根の動態や機能を評価した。北海道北部の林床にクマイザサが密生する森林において、冬季の積雪下にある細根を表層土壌10cmから採取した。2月の積雪は約1.5mあった。その結果、冬季でも樹木およびササの細根が観察された。2月の細根バイオマスは樹木は155-227,ササが21-77gm-2を示した。これは当該地域において報告されている生育期の細根バイオマスと比べて著しく低いものではない。したがって冬季においても植物の細根は積雪下で維持されていることが明らかになった。また先行研究ではササが細根バイオマスの主要な構成要素であることが報告されているが、本研究の結果は樹木の細根バイオマスの方がササよりも大きく、樹木・ササの根圏での優占度の空間的ばらつきが大きいことが示唆された。また今回は表層10cmの細根バイオマスで樹木根の方が大きかったことから、樹木細根がより土壌表層に集中して分布する可能性が示された。
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