森林植生の窒素吸収は、森林生態系における土壌-植生系の窒素動態および渓流水質を決定する上で重要な要因である。土壌-植生系において植生と土壌の境界にあり、養分吸収を担っているのが、細根とよばれる直径数mmの植物根である。細根の寿命は比較的短く入れ替わりが速いことから、細根動態や窒素吸収の時間変化は窒素動態に影響を及ぼすと考えられる。しかし細根の動態や窒素吸収能に関する知見は非常に限られている。さらに日本の森林では林床植生が比較的大量に繁茂しているが、林床植生が窒素動態に果たす役割に着目した研究例は少ない。そこで本研究では、樹木だけでなく代表的な林床植生であるササにも着目し、細根生産量と窒素吸収能を同時に測定することにより、森林植生の窒素吸収量の季節変化を明らかにすることを目的とした。
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