研究課題
本課題では大規模森林伐採の影響を外部循環・内部循環を定量的に評価することにより、森林伐採の長期影響評価モデルを構築することを目的としている。21年度は昨年度に引き続き、12haの伐採流域(スギ植林・放置)と30haの森林流域の渓流水質を2週間から1ヶ月に一度の間隔で測定した。その結果伐採後、伐採流域では森林流域に比べ約3倍程度の濃度上昇が見られたが、伐採後の経過年数が増加するほど、濃度が低下する傾向が見られた。また伐採後の長期的な物質循環プロセスの変化を明らかにするために時系列プロットを設置し、毎木調査、植物体・土壌の炭素・窒素蓄積量の定量化、リタートラップによる養分還元量の定量化を行うことに加えて、今年度は斜面位置の違いが森林構造や窒素無機化特性に与える影響に関しての評価を行い、その成果の一部を論文として発表した。さらにモデルのインプットデータとなる気象条件・土壌水分・地温などの環境条件の測定やモデルのパラメーターについての検討を引き続き行った。ここまでの研究により、調査流域は、未熟土であるため±壌中の炭素窒素含量が非常に小さいにも関わらず、樹木の一次生産量、土壌窒素無機化速度、樹木の窒素吸収量など窒素循環に関わるパラメーターが未熟土以外の同一気候帯の森林と大差ないことが明らかとなった。一方で伐採に伴う硝酸流出量は、他の温帯域に比べて小さい可能性が示唆された。次年度の最終年度に向けて、渓流水質、環境条件のモニタリングを継続するとともに、これまでの成果を踏まえた上で未熟土壌上に生育する森林における伐採が物質循環様式に与える影響を評価するモデルの構築を目指す。
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鹿児島大学農学部演習林研究報告 (印刷中)
Oecologia (印刷中)
Journal of Forest Research 14
ページ: 276-285