研究の最終目標は、野外観測と3次元土壌CO2ガス発生・移動シミュレーションモデルを通じて、土壌呼吸の地下過程を解明することにある。本研究の目的はそのうち、室内実験を通じて3次元土壌CO2ガス動態シミュレーションモデルを作成することである。本年度はまず、シミュレーションに利用している農林水産研究情報総合センター科学技術計算システムの新システム導入に対応し、昨年度構築したモデルの行列計算サブルーチンをインテル・マス・カーネル・ライブラリーのPARADISO関数に変更した。非常に単純な条件においては、3次元のガス拡散を表現する偏微分方程式には数学的厳密解が存在するが、シミュレーションの結果と比較したところ、両者が一致することを確認した。これにより構築されたモデルが正確に差分化されていることを明らかにした。内部から二酸化炭素が発生しない標準砂を用いて、実験システムを構築した。実験システムでは、縦38cm×横24cm×高さ26cmのボックスに豊浦標準砂を10cm深まで充填し、CO2センサー(Vaisala GMT220)、圧力センサー(Vaisala PTB210)、温度センサ0(TandD TR52)、ロガー(オムロンZR-RX40)、パソコンをもちいて土壌中のCO2濃度をモニターできる。センサーから既知の距離に、既知の濃度のCO2を少量注入し、3次元的に拡散していくCO2の濃度の変化をCO2センサーでモニターした。今回用いたCO2センサーは応答遅れがあることが知られているため直接CO2濃度の波形を比較することはできないが、CO2濃度の極大時間について検討したところ、およそ100秒の遅れがあることが確認された。CO2濃度の極大値はシミュレーション値とほぼ一致した。
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