本研究は、石灰岩地帯に生育する樹木を用いて石灰岩地帯の採石跡地に植栽し、石灰岩に対して高い適応性を持った樹木を用いて緑化する技術に応用することを目的とした。 平成21年度に石灰岩地帯の試験地に植栽したクスノキ科の樹木(クスノキ、シロダモ、タブノキ、ヤブニッケイ)の一部をサンプリングし、成長や養分動態を検討した。クスノキ科の苗木はいずれの樹種も活着し、順調に成長した。乾重量で比較するとクスノキが最も重く、以下タブノキ、ヤブニッケイと続き、シロダモは4樹種の間では最も乾重量が軽かった。しかし、クスノキ、タブノキ、ヤブニッケイは植栽区画によって成長が異なり、特に石灰岩の壁面から剥離された石灰石の落石によって、pHが高い区画では成長が大きく低下した。一方、シロダモはその区画間の乾重量の差はなかった。その理由として、シロダモは石灰岩地帯で特に欠乏しやすいリンを根に大量に蓄積しており、リンの欠乏による成長阻害を受けていなかったことが考えられた。 また、石灰岩地帯に分布するアラカシとウラジロガシ、あまり分布しないシラカシとシイノキの計4樹種を、石灰岩地帯の土壌を詰めたポットで育成した。また、外生菌根菌であるツチグリもしくはニセショウロを4樹種の根系に接種し、接種しない実生も併せて用意した。半年間育成した結果、ツチグリを接種した実生は4樹種とも乾重量が大きく増加したのに対し、ニセショウロを接種した実生は、ウラジロガシとアラカシでは乾重量が増加しなかった。非接種の実生は4樹種ともほとんど成長できなかった。ツチグリを接種した実生で成長を比較すると、ウラジロガシが最も乾重量が重く、次いでアラカシ、シラカシと続き、シイノキの乾重量は最も軽かった。これらの結果から、特にツチグリを接種したウラジロガシとアラカシは採石跡地の緑化に有効な樹種であると考えられた。
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